精巣腫瘍の治療
精巣腫瘍の診断
精巣腫瘍の診断には医師による触診と所見以外に血液検査と画像診断があります。
【血液検査】
血液検査(腫瘍マーカー)は精巣腫瘍の構成成分の診断や初期の転移診断を行うと
ともに化学療法の治療中や経過観察では治療効果の判定、再発の早期診断に利用
されます。
精巣腫瘍の構成成分や病期を診断する基準となる腫瘍マーカーは・・・
■ β-HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)
■ AFP(アルファフェトプロテイン)
■ LDH(乳酸脱水素酵素)
これらの腫瘍マーカーの数値により、ある程度、病理組織(セミノーマか非セミノーマか)
が推定できるわけですが、すべてのタイプの腫瘍が腫瘍マーカーを産生するわけでは
ありません。
【画像診断】
■ 超音波検査
陰嚢内の様子を見ます。腫瘍の位置や大きさ・形の確認、内部構造と正常な精巣と
比較したエコーの変化から診断します。
■ MRI検査
超音波診断で鑑別困難な場合やより詳細に精巣内の状態を知る診断に適しています。
■ CT検査
精巣腫瘍の場合のCT検査は主に転移部位の診断に用います。転移箇所として多い
腹部の大動脈、大静脈周囲のリンパ節のほか、肝転移、肺転移などを診断します。

精巣腫瘍の組織型と病期
精巣腫瘍は腫瘍の構成成分によって2種類の組織型に分かれます。腫瘍の構成成分
は血液検査である程度の目星をつけますが最終的には摘出した腫瘍の病理検査で
確定します。
【精巣腫瘍の組織型】
■ セミノーマ型
セミノーマの像からのみ成り立っている場合
■ 非セミノーマ型
構成成分の中に「胎児性がん」 「卵黄嚢腫(らんおうのうしゅ)」 「絨毛がん」 「奇形腫」
のいずれかが含まれている場合
セミノーマは化学療法と放射線療法がともに有効で、非セミノーマは化学療法は有効
ですが、放射線療法は有効でないという特徴があります。
【精巣腫瘍の病期】
精巣腫瘍の進行具合(転移の状況)によって病期の区分があります。
■ I期(ステージ1)
腫瘍が精巣に限局して存在している場合をいいます。原発病巣である精巣摘出後に、
画像診断で転移を示すものがなく、腫瘍マーカーの数値が順調に低下し、正常値に
戻った場合をI期としています。
■ U期(ステージ2)
横隔膜以下のリンパ節転移、具体的には腹部大動脈、大静脈周囲のリンパ節だけに
転移している状態をII期としています。このII期は、リンパ節のサイズにより小さい時を
IIa期、大きい時をIIb期と細分類されます。
■ V期(ステージ3)
転移の範囲が広く、横隔膜以上のリンパ節にまで認めれた場合をIIIa期、肺に認めら
れた場合をIIIb期、肝や脳まで転移が認められた場合をIIIc期としています。
なお、U期以上を進行性精巣腫瘍と分類します。
この病期分類は、がんの進行にしたがって定義されたもので、治療方針を考える上で
極めて実際的なものです。
精巣腫瘍の手術と化学療法
精巣腫瘍が確定した場合、身体の他の部位にできた腫瘍と異なり、病理検査を待たず
にとにかくまず精巣を腫瘍ごと摘出します。

手術法は、高位除精巣術(こういじょせいそうじゅつ)と呼ばれる陰嚢を切開せず、おなか
の下(盲腸のあたり)を開いてそこから精巣を取り出す方法を取ります。
手術時間は概ね1時間程度だといいます。
転移がある場合(U期、V期)は腫瘍の組織型、病期によって化学療法あるいは
放射線療法を行います。また、転移がなくとも再発防止のために予防的な意味で化学
療法が行われることもあります。
精巣腫瘍においてよく利用される化学療法はシスプラチン、エトポシド、ブレオマイシン
という抗がん剤を使うBEP療法です。
化学療法は4週間を1コースとして予防的化学療法では2コース治療のための化学療法
には抗がん剤の効果次第ですが3〜6コース行われるのが一般的です。
精巣腫瘍の組織型や病期によって治療方法は多少異なりますが基本的には画像診断
と腫瘍マーカーの数値を突合せ、画像診断において腫瘍がなくなり、血液検査でのマー
カーの値も正常化するまで化学療法、場合によっては腫瘍の摘出手術が行われます。
精巣腫瘍は化学療法が非常に効くため病期が進行していてもかなりの確率で
根治も期待できます。
ただし、当然ですが治療の過程で利用する化学療法には多大な副作用があります。
具体的には吐気・嘔吐、下痢、神経障害、脱毛、腎機能障害、精子産生障害などが
代表的でしょう。
精子産生障害に関しては、精巣腫瘍にかかる年代が20〜40代がほとんどということも
あり、結婚の有無や子供の有無など、状況にもよりますが化学療法前に精子の冷凍
保存を提案されることになると思います。